SCIENCE & PRACTICAL GUIDE / SOCIAL COMPARISON
子どもがSNSの「いいね」を気にするとき|比較・自尊感情・親子の会話
子どもがSNSのいいねや反応を気にするとき、承認欲求・社会的比較・自尊感情・問題的利用を混同しないためのガイド。青年期研究、APA、東京都、国内の児童調査をもとに、親子でできる観察と会話を整理します。
先に結論
子どもがSNSの「いいね」やフォロワー数を気にすることだけで、承認欲求が強すぎる、自尊感情が低い、問題的利用である、と決めることはできません。まずは、何と何を比べたのか、見た後に気分や行動がどう変わったのか、睡眠・学校・友人関係に支障があるのかを分けて見ます。
研究では、SNS上の上方比較(自分よりよく見える相手との比較)が、その場の自尊感情や外見満足度と結びつく場面が示されています。一方で、影響は年齢、内容、もともとの気分、友人関係、使い方で変わります。数字を取り上げるだけでなく、親子で「比較の向き」と「生活への戻り方」を観察するのが出発点です。
「いいねが気になる」を4つに分ける
家庭で「SNSに振り回されている」と感じる場面には、違う問題が重なっています。最初から「承認欲求」という一語で説明すると、子どもが何に困っているかを聞き逃します。
| 分けて見るもの | 具体的な場面 | 最初の問い |
|---|---|---|
| 社会的フィードバック | 投稿へのいいね、コメント、閲覧数、フォロワー数が気になる。 | 「何を期待して投稿した?」 |
| 社会的比較 | 友だち、インフルエンサー、知らない人の見た目・生活・人気と自分を比べる。 | 「自分より上・同じ・下のどんな点を比べた?」 |
| 自尊感情・外見満足度 | 反応や写真の出来を、自分の価値や体の評価と結びつける。 | 「投稿の数字と自分の価値が同じに感じた?」 |
| 問題的利用 | やめたいのにやめられない、睡眠・学校・食事・関係に支障が出る。 | 「時間ではなく、生活のどこが後ろにずれた?」 |
「承認欲求」は他人に認められたい気持ちを表す日常語で、診断名ではありません。認められたい気持ち自体を悪者にせず、数字が気分や生活をどの程度動かしているかへ話を戻します。
いいねは「賛成票」でも「人間の価値」でもない
APAのソーシャルメディア・リテラシー資料は、いいねやコメントが現実の人々の意見の代表とは限らず、いいねが多い投稿を人は「いい」と感じたり信じやすくなったりする一方、いいねは必ずしも賛成を意味しないと説明しています。投稿の見える数字は、内容の正しさ、人格、人気、友人関係を一つの尺度で測るものではありません。
さらにSNSの写真や動画は、投稿者が選び、加工し、公開する場面を選んだものです。「他の子は毎日楽しそう」「自分だけ遅れている」と見えたときは、画面に出ていない失敗・退屈・不安があることも同時に思い出せるようにします。これは「全部作り物だ」と否定することではなく、見えている情報が生活全体ではないと確認することです。
親子で言い換える例:
- 「いいねが少ない」→「見た人の数と反応が、期待と違った」
- 「あの子のほうが上」→「画面に出ている一場面と、自分の今の気分を比べている」
- 「自分は人気がない」→「この投稿の反応が少なかった。自分全体の評価ではない」
比較には「上・横・下」がある
比較はすべて同じではありません。自分よりよく見える相手との上方比較、似た位置の相手との横の比較、自分より悪く見える相手との下方比較に分けると、子どもの体験を少し具体的に聞けます。比較した本人がどちら向きと感じたかが重要で、親が画面だけを見て決めるものではありません。
| 比較の向き | 子どもの内側で起きうること | 確認する言葉 |
|---|---|---|
| 上方比較 | 「自分より楽しそう・きれい・人気がある」と感じ、落ち込みや焦りが出る。 | 「その投稿のどの部分が、自分より上に見えた?」 |
| 横の比較 | 似た年齢・関心の相手と、自分の今の状態を照らし合わせる。 | 「比べた後、安心した?変わらなかった?疲れた?」 |
| 下方比較 | 自分のほうがよいと感じ、一時的に安心することがある。 | 「その安心は、あとで自分の行動や気分にどう残った?」 |
14日間の研究で見えた「その場」の関連
Burnellらの2024年研究は、米国南東部の農村・低所得層を含む縦断研究の一部から、15〜18歳の94人を対象に14日間、1日3回の質問を行いました。SNSを直前の1時間に使った回答1,186件では、横の比較が75%、下方比較が16%、上方比較が9%でした。
上方比較を下方比較と比べたとき、その時点の自尊感情が低く、下方比較を横の比較と比べたときは自尊感情が高い関連が見られました。横の比較は、自己評価との一貫した関連がほとんどありませんでした。これは「上方比較をしたら必ず落ち込む」という法則ではなく、SNSを使った直後の体験に、比較の向きが関係する場面があるという結果です。
| 研究で確認できること | この研究だけでは言えないこと |
|---|---|
| 同じ子どもの中でも、比較の向きによって、その時点の自己評価が違う場面があった。 | 比較が自尊感情を一方向に下げるという因果、すべての年齢・国・家庭への一般化。 |
| 横の比較は最も多く、自己評価との関連は一貫しなかった。 | 横の比較はいつでも無害、または本人が気にしていないという意味。 |
| 上方比較は、外見満足度やつながりの感覚など複数の自己評価と関連した。 | 投稿を見た時間だけで、うつ病や低い自尊感情を診断できるという意味。 |
この研究は、子どもの画面を親が採点する方法ではありません。家庭で「見た直後の気分」を一回の印象で決めつけず、何日か同じ問いで聞くための考え方として使います。
反応が少ないと、つらくなる子もいる
「いいねの数」は、比較の対象だけでなく、自分の投稿への反応としても働きます。Leeらの2020年の3研究では、標準化したSNS場面で少ないいいねを受けた青年は、多いいねの条件より拒絶された感覚や否定的な感情・自己についての考えを報告しました。学校で仲間から傷つけられていた青年ほど、少ない反応への影響を受けやすい結果も示されています。
ただし、これは実験場面を含む研究で、すべてのSNSの数字が同じように作用することや、少ない反応が将来のメンタルヘルス問題を直接起こすことを証明したものではありません。子どもが投稿前後に不安になっているなら、「数字を気にするな」と説得するより、投稿の目的、誰からの反応を期待したか、学校や友人関係で何か起きていないかを確認します。
見た目・体の比較は、別の注意がいる
写真や動画では、体型、肌、服、顔、生活水準が目立ちやすくなります。Jarmanらの前向き研究は、平均14.27歳の1,911人に1年間で3回の調査を行い、SNS利用と体満足度の間に、利用量から直接つながる効果はおおむね見られない一方、社会的比較を介した間接的な関連を報告しました。比較が増えると体満足度が低くなり、その逆方向も見られました。
研究の対象はオーストラリアの青年で、体満足度は診断や摂食障害の有無ではありません。「写真を見ると必ず自分の体が嫌になる」と一般化せず、見た目の比較の後に、食事を抜く、体を隠し続ける、運動を罰のように扱う、外出や学校を避けるなどの変化が続いていないかを見ます。
APAは、特に美容・外見に関する社会的比較を制限し、投稿が選択・加工された一部分であることを理解するソーシャルメディア・リテラシーを勧めています。体の不安が強いときは、写真の評価や家庭のルールだけで抱えず、学校の相談先や医療機関へつなぎます。
日本の児童調査は、関連として読む
2026年のJ-STAGE掲載研究は、ICT教育が進むA県の小学校高学年を対象に、SNS利用、自尊感情、インターネット依存度の関連を調べました。抄録では、依存度が高い児童が半数以上を占め、依存度が高い児童ほど積極的な自尊感情の項目が低かったと報告されています。
これは日本の小学生への関心に近い資料ですが、A県の実態調査であり、抄録だけから全国の割合や原因を決めることはできません。自尊感情が低いからSNS利用が増えたのか、利用の仕方が自尊感情に影響したのか、別の学校・家庭・友人要因があるのかも、一つの関連だけでは分かりません。数字を子どもに当てはめるのではなく、本人の生活の変化を確認します。
親子でできる5分の会話
東京都のユースライター記事は、承認欲求を誰にでもある自然な感情として扱い、自分にとってちょうどよい距離感を探す方向を紹介しています。親が「承認欲求をなくそう」とするより、子どもが反応と自分の価値を切り離して考えられるよう、短い会話を繰り返します。
- 場面を聞く:「どの投稿・相手・数字が気になった?」。アプリ全体を悪者にしない。
- 期待を聞く:「誰に、何を分かってほしくて投稿した?」。承認欲求という言葉を先に貼らない。
- 比較の向きを聞く:「自分より上に見えた?同じくらい?それとも安心した?」。
- 画面の外を戻す:「見た後、眠り・食事・宿題・友だちとの時間はどうなった?」。
- 一つだけ調整する:通知を減らす、外見比較のアカウントを見ない、投稿後すぐ数字を確認しない、見る時刻を変えるなど、子どもと選ぶ。
会話の目的は、親が投稿を評価したり、端末の中身を隠れて監視したりすることではありません。安全上の理由で確認が必要な場合も、何を見るのか、なぜ必要なのか、いつ見直すのかを伝え、子どものプライバシーと安全の両方を扱います。
7日間は「いいねの数」ではなく、前後を記録する
反応数を毎日点数化すると、数字への注意がかえって強くなることがあります。7日間だけ、投稿や閲覧の前後と生活への影響を短く記録し、子どもが話せる範囲で一緒に見返します。
| 記録すること | 一行の例 | 見返す問い |
|---|---|---|
| きっかけ・内容 | 投稿した/友だちの写真を見た/おすすめから流れた。 | 偶然か、目的があったか、同じテーマが続いたか。 |
| 比較の向き | 上に見えた、横に感じた、比較しなかった。 | どの部分を比べ、誰と話したくなったか。 |
| 前後の感覚 | 見る前は普通、後は焦った/安心した/変化なし。 | 数分後や翌日にも残ったか、別の活動へ戻れたか。 |
| 生活への影響 | 寝る時間が遅れた、宿題が止まった、友だちに相談できた。 | 時間ではなく、睡眠・学校・関係に支障が続いたか。 |
1日だけ落ち込んだ、反応を確認した、投稿を消したという出来事だけで診断はできません。逆に、記録を続けるほど苦しくなる子には中止し、会話や相談へ戻します。
比較・いいね・時間・問題的利用を混ぜない
同じSNSの場面でも、次に調整する場所は違います。何が主な困りごとかで、使う対策を変えます。
| 主な困りごと | まず試すこと | 次に分けて読む記事 |
|---|---|---|
| 見た目や人気との比較で落ち込む | 比較のきっかけを言葉にし、外見・反応の数字から距離を置く設定や時間を一つ選ぶ。 | このページで前後の気分と生活を記録する。 |
| おすすめや関連投稿が同じ方向に続く | 表示された内容、履歴、推薦の入力を親子で短時間だけ確認する。 | 子どものおすすめフィードの点検 |
| 反応や投稿を止められず睡眠・学校に支障がある | 「何時間」だけでなく、やめたいのにやめられないか、日常の役割へ戻れるかを見る。 | スクリーンタイムと問題的利用 |
| 悪口、晒し、仲間外れ、脅しがある | 安全を優先し、証拠を残せる範囲で保存して、保護者・学校・サービスへ相談する。 | 子どもへのネット上の傷つける投稿 |
写真を投稿する前の同意、位置情報、学校名、他人の写り込みが主題なら、子どもの写真とSNSのプライバシーへ分けます。ドーパミンや脳の説明に置き換えたいときも、スマホとドーパミン研究の読み方で、心理的な体験と脳研究を混同しないようにします。
相談へ戻る目印
次のような変化が続く、強くなる、本人が一人で抱えている場合は、家庭のSNSルールだけで解決しようとせず、信頼できる大人、学校の相談先、医療機関などへつなぎます。
- 投稿や比較の後の強い不安・落ち込み・怒りが続き、日常へ戻れない。
- 食事、体型、肌、運動についての心配が強くなり、食事を抜く・体を傷つける・外出や学校を避ける変化がある。
- 睡眠、宿題、登校、友人関係が継続的に崩れ、やめたいのにやめられない状態がある。
- 悪口、脅し、晒し、性的な要求、自傷を示す投稿など、安全に関わる内容がある。
「いいねを気にする子」とラベルを付けるより、「どの場面で、どんな気持ちになり、生活のどこに影響したか」を伝えると相談先が状況を把握しやすくなります。自傷や差し迫った危険がある場合は、SNSの設定より本人の安全を優先し、地域の緊急窓口や医療機関へ相談してください。
避けたい6つの短絡
- いいねを気にする=承認欲求が病的:認められたい気持ちは自然で、問題は生活への支障と苦痛で見る。
- いいねが少ない=人気がない:表示された反応は、投稿の価値や人間の価値の投票ではない。
- SNSを全部消せば解決:友人関係、学校での出来事、体の不安など別の要因を残したままになることがある。
- 利用時間だけを責める:時間と、比較・内容・切り替え・睡眠への影響を分ける。
- 親が隠れて監視すれば安全:安全上の確認は必要でも、目的・範囲・見直し時期を子どもと共有する。
- 上方比較は全員に悪い:研究は関連を示す場面があるという話で、年齢・文脈・本人の受け取り方を消さない。
家庭でできる変更は、通知を減らす、比較のきっかけを見えにくくする、投稿後すぐ確認しない、画面の外の活動へ戻る合図を作るなど、一度に一つで十分です。うまくいかない日は、子どもの意志の弱さではなく、設定・友人関係・睡眠・気分のどこを見直すかを話します。
まとめ:数字ではなく、比較の向きと生活への戻り方を見る
子どもがSNSのいいねを気にすることは、社会的な反応を求める自然な気持ち、誰かとの比較、外見や自尊感情の不安、問題的利用が重なって見える場面です。研究は、上方比較や少ない反応がつらさと結びつく子どもがいることを示しますが、全員への因果や診断を示すものではありません。
まずは、何を比べたか、見た後にどう感じたか、睡眠・学校・友人関係に影響したかを7日間ほど観察します。親子で短く話し、通知・見る時刻・比較のきっかけ・相談先のどれか一つを調整する。苦痛や安全上の問題が続くときは、SNSの数字から離れて、信頼できる大人や専門家へ戻ってください。
REFERENCES
参考資料
- Health advisory on social media use in adolescence(American Psychological Association、2023)
- How much is too much social media use: A Q&A with Mitch Prinstein, PhD(American Psychological Association、参照日 2026-09-07)
- Adolescents’ Social Comparison on Social Media: Links with Momentary Self-Evaluations(Affective Science、2024)
- Getting Fewer ‘Likes’ Than Others on Social Media Elicits Emotional Distress Among Victimized Adolescents(Child Development、2020)
- Direct and indirect relationships between social media use and body satisfaction: A prospective study among adolescent boys and girls(New Media & Society、2024)
- 児童のSNS利用及び自尊感情とインターネット依存度との関連―A県の小学校の実態調査から―(児童学研究 / J-STAGE、2026)
- 「いいね」が気になるのはなぜ?承認欲求との付き合い方を考えてみよう(東京都福祉局 TOKYO YOUTH HEALTHCARE、2025)
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