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子どものイヤホン難聴を防ぐには?音量・時間・休憩・受診を分けて考える

子どものイヤホン・ヘッドホン利用で気になる聴力を、音量、聴取時間、周囲の騒音、耳の休憩、警告サインに分けて整理。厚生労働省、WHO、系統的レビューをもとに、60%や75dBを万能な安全線にせず、親子で確認できる安全聴取の手順を紹介します。

先に結論

子どものイヤホン・ヘッドホン利用は、「何%なら安全」「何時間なら必ず大丈夫」という一つの数字だけで判断できません。音の大きさ、聴く時間、同じことを繰り返す頻度、周囲の騒音、耳を休める時間をセットで確認します。

厚生労働省やWHOの現行の安全聴取Q&Aは、音量を下げる、騒がしい場所で音量を上げない、聴取を中断して耳を休める、音量・曝露をモニターする、耳鳴りや聞こえにくさがあれば専門家へ相談する、といった安全聴取を案内しています。60%、75dB、1時間ごとに10分という目安は、個人の聴力を保証する線ではなく、家庭で設定を見直すための出発点です。

「イヤホン難聴」を3つに分ける

大きな音の後に耳がこもる、キーンとする、会話が聞き取りにくいといった経験は、同じ原因・同じ重さとは限りません。家庭では診断せず、状態の変化と続き方を分けて記録します。

分けて見るもの 起こりうる体験 家庭での戻り先
一時的な疲れ・耳鳴り 大きな音の後に、音が遠い、耳がこもる、キーンとする。 すぐ音を止め、静かな場所で休む。繰り返すなら聴取条件を変えて相談する。
音による聴覚への負担 大きな音を長時間・繰り返し聞き、聞こえ方に変化が続く。 音量・時間を下げ、耳鼻咽喉科で聴力を確認する。
別の耳の病気・外傷 片耳だけの急な変化、耳の痛み・耳だれ、めまいを伴う。 イヤホンのせいと決めつけず、早めに耳鼻咽喉科へ相談する。

「難聴」は聞こえにくいという症状を指す言葉でもあり、原因は音量だけではありません。アプリのセルフチェックや、テレビの音量を下げるだけで原因を特定しないようにします。

リスクは「音量×時間×頻度」で増える

WHOは、音が大きいほど、また長く聞くほど、聴覚へのリスクが高くなると説明しています。たとえば同じ1時間でも、静かな会話程度の音と、叫び声に近い音では負担が違います。毎日の通学、動画、ゲーム、オンライン授業、ライブ会場を別々に使っていても、耳に届く音の曝露は重なります。

確認する軸 家庭で聞くこと 調整の例
音量 周囲の声が聞こえない、音漏れが大きい、騒音に負けるため音量を上げていないか。 端末の音量を下げ、音量制限や曝露モニターを有効にする。
連続時間 動画・ゲーム・通話を、耳を休めず続けていないか。 1時間を一つの区切りにし、静かな場所で耳と目を休める。
頻度と重なり 通学、学校、帰宅後、寝る前に毎日使い、休む時間がないか。 使わない移動、スピーカーでよい授業、通知のない時間を作る。
周囲の音 電車、道路、ゲーム大会など、聞き取るために音量を上げる場所か。 遮音性・フィットを見直し、可能なら騒音源から離れる。

60%・75dB・40時間をどう読むか

WHOの安全聴取Q&Aは、端末の最大音量の60%以下、平均80dB未満を目安として示し、80dBなら週40時間、90dBなら週4時間という例を紹介しています。厚生労働省の資料は、WHOの参照値として子どもなど感度の高い人は75dBで週40時間という上限を紹介しています。

ここで混同しやすいのは、端末のスライダーの60%と、耳元で測った音の75dB・80dBが同じ単位ではないことです。機種、アプリ、イヤホンの密閉、音源、耳の形、周囲の騒音で、耳に届く音は変わります。目安を超えなければ必ず安全、下回れば必ず無害という意味にはしません。

数字 何の目安か 言い換えてはいけないこと
最大音量の60%以下 端末側で音量を上げすぎないための設定目安。 すべての端末・イヤホンで耳元の音が同じになる安全線。
75dB・週40時間 WHO-ITUの子どもなど感度の高い人向けの参照曝露量。 子どもなら週40時間まで自由に聴いてよいという許可や診断基準。
1時間ごとに10分休憩 連続した騒音から離れ、耳を休める啓発上の目安。 休憩を入れれば、大音量・長時間の負担が消えるという保証。

親子で作る5分の安全聴取セット

設定を一度に全部変えると、オンライン授業や友だちとの通話まで使いにくくなります。子どもの用途を聞き、次の5つから一つずつ確認します。

  1. 音量を下げる:最大音量の60%以下を起点にし、周囲の声が聞こえるか、音漏れがないかを確認する。
  2. 耳に合う機器を選ぶ:フィットのよい、可能ならノイズキャンセリングなどで騒音に対抗して音量を上げにくい機器を選ぶ。遮音は周囲の安全確認と両立させる。
  3. 音量制限・モニターを有効にする:端末やアプリにある音量上限、ヘッドホンの聴取曝露、保護者設定を確認する。
  4. 区切りを作る:1時間連続を避け、静かな場所で10分程度耳を休める。授業や通話の途中で外せない場合は、スピーカーなど別の方法も検討する。
  5. 警告サインを共有する:耳鳴り、こもり、聞き返しが増えた、会話が聞き取りにくいなどを「我慢すること」にしない。

ノイズキャンセリングは音を消して大音量を許す機能ではありません。音量を上げずに聞けるかを試すための道具で、歩行・自転車・道路横断など周囲の音が必要な場面では安全を優先します。

ゲーム・動画・通話は「音の使い方」が違う

イヤホンを使っている時間が同じでも、音楽、動画、ゲーム、ボイスチャット、オンライン授業では、音の大きさや急な効果音、周囲の騒音、休憩の取りやすさが違います。WHOとITUは2025年、ゲーム機器やゲームソフトに安全聴取機能や曝露情報を組み込む標準を公開しました。

WHOが紹介する2024年のゲーム音レビューでは、14研究の多くで平均音量が許容曝露限度に近いか超え、ゲーム時間は平均で週約3時間でした。聴力・耳鳴りとの関連を調べた5研究のうち4研究で関連または相関が報告されましたが、利用者の人数・機器・測定方法が違うため、ゲームをすると全員が難聴になるという結果ではありません。

ゲームの通話相手、動画の音圧、突然の効果音が気になる場合は、音量上限だけでなく、ゲーム内の効果音・ボイスチャット・通知音を個別に下げます。知らない人とのチャットや課金などが主な困りごとなら、子どものオンラインゲーム内チャット安全ガイドへ分けて確認します。

研究の数字は「実際の難聴」と分けて読む

2022年の系統的レビュー・メタ解析は、12〜34歳の個人用リスニング機器や大音量の娯楽施設に関する安全でない聴取を調べました。個人用機器で過剰な音にさらされる割合は23.81%(95%信頼区間18.99〜29.42%)、大音量の娯楽施設では48.20%と推定され、世界の12〜34歳で6.7億〜13.5億人が難聴リスクにさらされうると試算しました。

この数字は「難聴になった人の割合」ではなく、研究で定義した安全でない聴取に該当しうる人の推計です。研究間のばらつきは大きく、低所得国の研究は含まれず、若者の音曝露が将来の永続的な聴力低下にどうつながるかはまだ十分に分かっていません。大きな数字だけで子どもを怖がらせず、音量と時間の調整へ戻します。

厚労省の日本語資料を家庭のルールにする

厚生労働省のe-健康づくりネットは、音量を最大の60%以下にする、騒音から離れて休憩する、音量・聴取時間をモニターする、大きな音から耳を守る、警告サインに気づく、定期的に聴力検査を受けるという推奨を整理しています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の予防促進策として、1時間連続して使う場合は10分耳を休めることも掲載しています。

家庭では、ルールを「イヤホン禁止」にせず、次のように用途別にします。

場面 親子で決めること 確認する限界
オンライン授業・学習 可能ならスピーカー、イヤホンなら音量上限と休憩を設定する。 授業の聞き取り、周囲の声、学校の機器ルールで方法を調整する。
音楽・動画 最大音量を制限し、連続視聴の終点と耳を休める時間を先に決める。 動画の本数と音の曝露は別。夜の利用は睡眠への影響も確認する。
ゲーム・ボイスチャット 効果音・通話音・通知音を別々に下げ、ゲームの休憩に耳の休憩を合わせる。 知らない人との接触、課金、画面時間が主題なら別の安全ルールへ戻る。
通学・屋外 音量を下げ、周囲の音と呼びかけが聞こえる状態を優先する。 自転車や道路横断では、機器の安全機能より周囲の確認を優先する。

寝る前のイヤホンが気になるときは、聴力と睡眠を同じ問題にせず、夜のスマホと睡眠のガイドで寝室・通知・切り替えを確認します。

7日間は「聞こえがよくなったか」ではなく、条件を見る

家庭の記録で聴力を測定することはできません。7日間だけ、音量の設定と耳の反応、使った場所、休憩、生活への影響を一行ずつ記録し、設定を一つだけ変えます。

記録すること 一行の例 見返す問い
音源と場所 音楽、ゲーム、通話/自宅、電車、屋外。 騒音に負けて音量を上げていなかったか。
音量と連続時間 音量上限60%、45分、休憩10分。 設定と実際の使用が一致していたか。
耳の反応 耳鳴り、こもり、聞き返し、痛み、変化なし。 音を止めた後も残ったか、繰り返したか。
生活への影響 寝る時刻、会話、学校、外出、ゲームの切り替え。 耳の問題と睡眠・画面時間の問題を分けられるか。

記録している間に耳鳴りや聞こえにくさが続く場合は、7日間を終える必要はありません。イヤホンを外し、耳鼻咽喉科へ相談します。

このサインは「休めば大丈夫」と決めつけない

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、片耳の難聴、急に生じた難聴や変化、耳鳴り・めまいを伴う聞こえにくさ、耳だれ・耳の痛みを伴う聞こえにくさでは、別の病気の可能性もあるため早めの耳鼻咽喉科受診を勧めています。

  • 音を止めても耳鳴り、こもり、聞こえにくさが続く、または繰り返す。
  • 片耳だけ急に聞こえにくい、会話や高い音が聞き取りにくい。
  • 耳の痛み、耳だれ、めまい、強い違和感を伴う。
  • 大きな音を聞いた直後から、聞こえ方が明らかに変わった。

ここで挙げた項目は診断ではありません。耳垢、中耳炎、外傷、突発性難聴など、イヤホン以外の原因もあります。市販の耳掃除や音量を上げるセルフテストで様子を見続けず、保護者が変化を伝えて受診します。

目・睡眠・利用時間とは別の問題として扱う

イヤホンの長時間利用があると、目の疲れ、寝不足、問題的利用、耳への音の曝露が同時に見えることがあります。しかし、同じ「使いすぎ」という言葉で一つにまとめると、必要な相談先を逃します。

主な困りごと 最初に見ること 分けて読む記事
目の疲れ・近視 近業、距離、休憩、屋外、見え方を確認する。 子どものスマホと目のガイド
寝不足・夜の切り替え 寝室、通知、就寝前の視聴、翌日の眠気を確認する。 夜のスマホと睡眠
やめにくさ・生活への支障 時間だけでなく、やめたいのにやめられないか、日常へ戻れるかを見る。 スクリーンタイムと問題的利用
耳鳴り・聞こえにくさ 音量、連続時間、騒音、休憩、片耳か両耳かを確認する。 このページから耳鼻咽喉科へ戻る。

避けたい6つの短絡

  • 60%なら必ず安全:端末の表示と耳元の音は同じ単位ではなく、音源・機器・場所で変わる。
  • 75dB・週40時間まで自由:参照曝露量であって、子ども一人の聴力を保証する許可ではない。
  • ノイズキャンセリングなら大音量でもよい:音量を下げやすくする機能であり、長時間の大音量を無害にしない。
  • 耳鳴りは休めば必ず戻る:続く、繰り返す、急な変化、片耳、痛み・めまいがあるときは受診する。
  • イヤホンを禁止すれば解決:オンライン授業や友人との通話も含め、用途と安全な代替手段を親子で選ぶ。
  • 音の問題は利用時間だけの問題:聴覚への曝露、睡眠、目、問題的利用は別々に観察する。

家庭で最初にすることは、音量上限を一つ下げる、騒音の中で使わない、連続時間を区切る、休憩を予定に入れる、警告サインを共有する、のどれか一つで十分です。子どもを責めるより、聞こえ方を守れる条件を一緒に作ります。

まとめ:音量と時間をセットにし、変化は耳鼻咽喉科へ戻す

子どものイヤホン・ヘッドホン利用は、音量、連続時間、頻度、周囲の騒音、休憩をまとめて見ます。60%や75dB・週40時間は安全聴取の参照値であり、端末・機器・場所・本人の聴力を無視した万能線ではありません。

まずは音量制限、フィット、騒音からの距離、1時間ごとの休憩、曝露モニターを親子で一つずつ確認します。耳鳴り、こもり、急な聞こえにくさ、片耳の変化、痛み・めまい・耳だれがあるときは、音の設定だけで様子を見続けず、早めに耳鼻咽喉科へ相談してください。

REFERENCES

参考資料

  1. ヘッドホン(イヤホン)難聴(厚生労働省 e-健康づくりネット、参照日 2026-09-07)
  2. 広報誌「厚生労働」2024年11月号 特別企画1:ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)(厚生労働省、2024)
  3. Deafness and hearing loss: Safe listening(World Health Organization、2026)
  4. Global standard for safe listening video gameplay and esports(World Health Organization / International Telecommunication Union、2025)
  5. Prevalence and global estimates of unsafe listening practices in adolescents and young adults: a systematic review and meta-analysis(BMJ Global Health、2022)
  6. Risk of sound-induced hearing loss from exposure to video gaming or esports: a systematic scoping review(BMJ Public Health / World Health Organization、2024)
  7. 耳の症状:聞こえにくい(一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会、参照日 2026-09-07)

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